「おはようございます」のスタンプと一緒に、朝から友人グループのLINEにこんな重厚なメッセージを投げ込んでみました。
「かれこれ40年前、『コンピュータ占い』が一重大ブームだったのを覚えている。当時の人々は『コンピュータは間違えない』という前提を疑わなかった。40年の時を経て『AI』へと置き換わっただけで、僕らの心理構造にはほとんど進歩がない……」
……案の定、友人たちからは「朝から熱いな」「悟り開いてる?」「で、結局その占いは当たったの?」というリアクション(または生温かい既読スルー)が返ってきたわけですが(笑)、これ、冗談抜きで今のAIブームの本質だと思っています。

「Windows 95」の10年前、パソコンが“高価なゲーム機”だった時代
少し昔話をさせてください。今から40年前というと、時代は1980年代半ば(1985年前後)です。
世界をガラリと変えた「Windows 95」が発売されるのは、ここからさらに10年も先の話。 当時の日本国内の動きを振り返ると、1985年の『通信白書』に「情報化リテラシー」という表現が初めて登場した頃でした。国としても「これからは情報化社会だ!」と声を上げ始めた黎明期です。
ですが、当時の一般的な世間の感覚はどうだったでしょうか?
家にパーソナルコンピューター(パソコン)がある家庭なんて、ごく一部のマニアやお金持ちの家に限られていて実に珍しかったものです。そして仮に家にあったとしても、その多くの実態は「めちゃくちゃ高いゲーム機」でした(マイコンでテープからゲームを読み込ませて遊ぶような時代です)。
一般の人々にとって「コンピュータ」とは、SF映画に出てくるような未来の技術か、企業の巨大な部屋に鎮座している謎の精密機械。つまり、「自分にはよく分からないけれど、もの凄く頭が良い絶対に間違えない機械」というブラックボックスであり、どこか神聖視すらされていた時代でした。
街角に現れた「神様」=コンピュータ占い
そんな時代に大ブームを起こしたのが、街角やゲームセンター、観光地などに置かれていた「コンピュータ占い」です。
生年月日や名前を入力すると、ウィーンという機械音とともに、レシートのような細長い感熱紙がガガガと吐き出されてくる。そこに印字された運勢や相性を見て、当時の僕たちは大興奮していました。
「うわっ!コンピュータが『今年の運勢は最高』って言ってるから間違いない!」
仕組みを冷徹に見れば、単に打ち込まれた数値データに対して、あらかじめプログラムされた固定の文章パターンを呼び出して印刷しているだけです。 しかし、コンピュータの中身を知らない人々は、「高度な計算によって導き出された絶対の真実」だと疑わずに信じ込みました。
40年経ち、ツールは進化したが……
で、40年の時を経た現代。
画面の向こうにいるのはレシートを吐き出す機械ではなく、人間の言葉を巧みに操る「ChatGPT」や「Gemini」といった生成AIになりました。
AIは、まるで熟練の専門家かのように滑らかで、丁寧で、もっともらしい理由を添えて回答を返してくれます。
すると、どうでしょう。現代の僕たちの反応は……
「AIがこう言ってるんだから、これが正解なんだろう」
……あれ? 1985年の「情報化リテラシー」という言葉の誕生から40年。通信環境もマシンスペックも異次元レベルに進化しましたが、「分からないものを神格化して鵜呑みにする」という使う側の心理構造、1ミリも進化してなくないですか?(笑)
むしろ、現代のAIは下手に「人間らしく」「賢そうに」喋る分、その盲信は40年前の占いブームよりもはるかに深く、危険なものになっています。
AIは「神様」ではなく「確率の産物」
AIが提示する答えは、神様の啓示でもなければ、絶対の正解でもありません。 その正体は、「過去の膨大なデータから、次に繋がる確率が最も高そうな言葉を並べている集大成」です。
だからこそ、平気で知ったかぶり(ハルシネーション)をするし、偏ったデータがあれば偏った答えを出す。「もっともらしい嘘」を吐くことにかけては天天下品です。
40年前、ゲームセンターで「占い結果」を真に受けて一喜一憂しているくらいなら微笑ましい思い出で済みます。 しかし現代において、ビジネスの意思決定やシステム開発の現場で「AIが言ってるから」と検証もせずに鵜呑みにするのは、ただのホラーでしかありません。
「AIを使う」とは、AIに従うことではない
今回、GoogleやIBMのAI認定資格を取得する中で、最新技術の凄さと同時に改めて痛感したことがあります。
それは、「ツールがどれだけ進化しても、使う人間側のリテラシーが更新されなければ、僕たちは同じ歴史を繰り返す」ということです。
- AIが出した回答を「正解」として拝むのではなく、疑って検証する
- AIに丸投げするのではなく、提示された選択肢を自分の意志で取捨選択する
AIに指示されて働く「従属者」になるのか、AIをちょっと手癖の悪い(でも超優秀な)相棒として使いこなす「主人」になるのか。その境界線は、40年前の「コンピュータ占い」を冷ややかに見つめるような、冷静な視点を持てるかどうかだけです。
これからの連載でお伝えすること
というわけで、前置きが大変長くなりました!
このブログ連載では、「最新AIすごーい!」と手放しで崇め奉るつもりはありません。かといって、難解な技術理論ばかりを並べるつもりもありません。
WAI SYSTEMSのブログとして、次の2つの軸で「AIに踊らされず、道具として倒す(使いこなす)ためのリアルな知見」を発信していきます。
- 📘 一般ビジネス編: 日常の面倒な業務(メール作成・議事録・データ集計)を、AIという「道具」を使って安全にラクにする実践テクニック
- 💻 システム開発・PM編: 開発現場やプロジェクト管理で、AIのハルシネーション(ウソ)を制御しながら爆速で成果を出すプロのノウハウ
40年前の「コンピュータ占い」の時代から一歩踏み出して、AIという最高の道具を一緒に使い倒していきましょう!